札幌高等裁判所 昭和26年(う)60号 判決
原審第二回公判調書には、弁護人所論の通り弁護人の氏名が記載されていないのでこれは刑事訴訟法第四十八条第二項刑事訴訟規則第四十四条の規定に違反していることが明らかである。しかし弁護人は裁判長の選任または被告人の選任によつてあらかじめ確定しているのであつて、公判調書に検察官の官氏名を記載するのとその必要性において著しい差異がある。すなわち公判調書に検察官の官氏名の記載がない場合には記録上全然何人がその公判に検察官として出席したかを知るに由ないのであつて刑事訴訟法第二百八十二条に従い公判を開いたことを確める方法がないから、かようの公判調書は無効とする外ないのに反し弁護人の氏名を公判調書に遺脱した場合は弁護人選任命令または弁護人選任届によつて記録上何人が被告人の弁護人となつているかを知ることができるから、かようの公判調書を無効とするいわれがない(最高裁判所昭和二五年(れ)第一六〇号同年六月二十三日判決参照)原審における被告人の弁護人はその選任した弁護士古荘義信一人であつたことは弁護人選任届に徴して明らかであるから、第二回公判調書に弁護人とあるのは同弁護士であることもまた明らかである。ゆえに原判決が同公判において取り調べられた弁護人摘示の各証拠によつて判示事実を認定したのは決して違法でない。